介護サービス契約を締結する際には契約書を作成しよう!

契約説明_介護法務

 介護事業者が、介護サービスの利用を望む利用者との間で介護サービス契約を締結する際、契約書を作成することがほとんどであると思います。そこで、今回は介護サービス契約を締結する際に交わす契約書について説明していきます。
 
 
 

1 契約書を作成する必要はあるか!?

 契約は、契約当事者の意思の合致により成立するものであり、介護サービス契約も同様です。そして、介護保険法に契約書を作成しなければならないと規定されているわけではありません。
 しかしながら、口約束で契約を締結してしまうと後にどのような内容の契約になっていたのかという点につき紛争になる危険がありますし、様々なサービスを提供する介護事業サービスにおいては、その危険はより高いと思われます。そこで、事業者、利用者双方の権利義務を明確にすることで後の紛争を防止するためにも、契約書を作成すべきです。

2 契約書とサービス内容説明書及び重要事項説明書の役割分担

 では、契約書にはどのような内容を書けばいいのでしょうか。契約書は、事業者、利用者双方の権利義務を明確にすることで後の紛争を防止する目的で作成する書面ですので、提供する介護サービスに関する権利義務について記載する必要があります。
 もっとも、提供する権利義務について全て詳細に契約書に記載すべきであるかというと、そうではありません。提供する介護サービスについての詳細を全て契約書に記載してしまっては、契約書の内容が膨大になってしまい、この契約書に何が書いてあるのか利用者にとって不明確になってしまいます。契約書の内容が利用者にとって不明確になってしまっては、後の紛争を防止するという契約書作成の目的を達成することができません。
 そこで、契約書には契約のもっとも重要な点について明確にし、それ以外の内容については契約書とは別の重要事項説明書に記載するというように書面の役割を分けるとよいでしょう。契約書と重要事項説明書を分けて書面を作成することは実務上行われていることかと思いますが、この意味は、主に利用者に契約内容を十分理解してもらう点にあるのです。

3 契約書の記載内容

 では、何が契約のもっとも重要な点なのでしょうか。利用者は、どのようなサービスをどの期間、どのくらいの金額で受けることができるのかという点に関心があり、これらが契約内容の核心部分です。このことは事業者が事業を継続していく上でも同様でしょう。そこで、①提供するサービスの内容、②提供する時期、③サービスの対価となる金額という点は、介護サービス契約を締結するに際し、事業者、利用者双方にとって契約の核心部分であるので、これらの項目について契約書に記載する必要があるでしょう。

3.1 ①提供するサービスの内容

①サービスの内容は契約の核心部分でありますが、その内容についての詳細を全て契約書に記載しては、やはりわかりづらくなってしまいます。
そこで、契約書にサービス内容を記載した「サービス内容説明書」を添付する方法がよくとられます。その上で、契約書には、「別紙サービス内容説明書記載のサービスを提供する」という文言で簡潔に記載する方法をとることで、利用者にとって受けるサービスの内容を明確に示すことができるでしょう。

3.2 ②提供する時期

 ②提供する時期については、契約がいつからいつまで続くのか、どのような場合に契約が終了するのか、事業者及び利用者がどのような場合に契約を解除できるのか明確にしておく必要があるでしょう。
ただ、事業者からの解除については、制限的に考えるべきです。なぜならば、介護保険という公的システムを実施している以上、要介護認定にもかかわらず、利用者がサービスを受けることができない事態を防止することが要請されているからです。

3.3 ③サービスの対価となる金額

 ③サービスの対価となる金額については、介護保険給付であれば、自己負担分の1割や居住費、食費をいつどのような方法で支払うか明確にしておくべきでしょう。

4 重要事項説明書の記載内容

 重要事項説明書には、契約書に記載した内容以外で重要な内容を記載します。この内容は、運営規定の概要、勤務態勢、その他の利用者がサービスを選択するのに必要な重要事項です。
 この「利用者がサービスを選択するのに必要な重要事項」が、前記した契約書に記載した契約の核心部分以外に必要とされる重要な事項です。例えば、サービス内容とその対価である料金を詳細に記載したり、苦情の受付方法や残置物の引取方法、緊急時の対応方法などが記載されたりします。そして、重要事項説明書は、利用者に渡し、その内容を説明する必要があります。

5 まとめ

 このように、介護事業者が介護契約を締結する際には契約の核心部分を記載した契約書を作成し、重要事項説明書を作成して説明することで、後のトラブル防止に効果を発揮します。
なお、契約書、サービス内容説明書及び重要事項説明書は、日本弁護士連合会がホームページ上にモデル案を掲載していますので、参考にするとよいでしょう。

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