厚生労働省が介護事業者に要請する「誤嚥事故防止策」とは!?

誤嚥事故マニュアル

これまで、誤嚥事故における判例を基にして、介護事業者が気をつけるべき対応策を紹介してきましたが、その際、厚生労働省が介護事業者に対して望む対応を記載した指針(福祉サービスにおける危機管理に関する取り組み指針)の存在についても紹介しました。
この説明の中で、介護事業者が指針に記載されていることを行っていなかった事実が、介護事業者に損害賠償責任を認める根拠の1つになっていましたね。このように、介護事業者にとって、行政が介護事業者に望む対応が記載してある指針の内容を理解しておくことは非常に重要です。そうはいっても、指針には様々な情報が(しかも長々)記載されており、とっつきにくく、なかなか目にする機会がないのではないでしょうか。
そこで、今回は、その指針に記載してある、誤嚥事故を防止するために介護事業者が留意すべき事項にポイントをしぼって、確認していこうと思います。

1 介護事業者が留意すべきものとして指針に記載されている内容

1-1 食前の準備

1-1-1 排泄又はトイレの有無を確認し、食事をすることを話し了解を得る。

この際の留意事項は、

利用者がしっかり覚醒されていることを十分確認すること

です。
 

1-1-2 姿勢を整える。

この際の留意事項は、

①ギャッジベッドの場合、約30度起こし上半身を挙上する
②身体がずれないよう膝関節の下に枕(クッション)を入れ下半身を安定させる
③頸部を前屈させ誤嚥しにくい体勢をとる
④片麻痺のある場合は、麻痺側の肩と上肢の下に枕を差し込み、やや挙上する

です。
 

1-1-3 手、口腔内を清潔にする

この際の留意事項は、

①含嗽(うがい)ができない利用者の場合、口腔内の粘りをとり咀嚼(そしゃく)し易くする
②義歯使用者は、きちんと装着してあるかどうかを確認しておく

です。
 

1-1-4 食事をセットする。

この際の留意事項は、

①利用者から食事が見える位置にセットする
②エプロン(タオル)を使用し、食べこぼしなどによるシーツや衣類の汚れを防ぐこともあろうかと思いますが、エプロンを嫌がる利用者もいるため、その意思を確認する

です。

1-2 摂食の介助

摂食時の介助における留意事項は、

①一口ずつ嚥下を確かめ、適宜水分を交えながらすすめる
②水分、汁物はむせやすいので少しずつ介助する
③咀嚼(そしゃく)中は、誤嚥の危険があるので、返事を求めるような話しかけをしてはならない
④のどがゴロゴロいうようであれば中断して様子をみる。
※ゴロゴロがとれないようであれば、誤嚥の危険があるため看護師等に報告する。
⑤服薬があれば食事の最後に利用者が飲み易い方法(オブラートに包むなど)で介助する
⑥食事の摂取量を確認しておく

です。

1-3 食後の介助

1-3-1 口腔内の清拭

この際の留意事項は、

義歯をはずせる場合は洗い、はずせない場合などは、利用者にあった方法(含嗽、歯ブラシ等)口腔内をきれいにする

です。
 

1-3-2 安楽な体位にする

この際の留意事項は、

利用者の楽な体位にして(身体の下に挿入した枕をはずす。ギャッジベッドを元の高さに戻す)、休息ができるようにする

です。

2 おわりに

いかがでしたでしょうか。当然のことしか記載していないなぁという方から、そこまでの対応を求められているの!?と驚かれた方まで、様々な方がおられたかもしれません。
繰り返しになってしまいますが、本指針に記載された上記留意事項は、誤嚥事故を防止するために介護事業者が行うべきであると厚生労働省が考えている防止策です。したがって、少なくとも、今回ここに書いた内容については、マニュアル化し、職員にしっかり教育していく必要があるでしょう。このことが、介護事業者の責任を否定する事情になりますし、なにより、不幸な誤嚥事故の発生そのものをなくすことつながります。

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