介護保険サービス事業者として指定を受ける方法

介護事業の始め方

 前回は介護サービス事業の開始するにあたり、その種類を記事にしました。
介護サービス事業はいずれも「指定」と謳われているとおり、地方公共団体から指定を受ける必要があります。今回は、どうすれば指定を受けることができるのかについて、書いて行きたいと思います。
 
 

1.指定を受けるための要件

おおざっぱに言いますと、次の3つの要件を満たす必要があります。

①原則として、事業者が法人であること

②提供するサービスごとに、適切な人員基準を満たしていること

③提供するサービスごとに適切な施設基準、運営基準を設けそれに従っていること
 

1.1 ①「事業者が法人であること」

 まず、原則として事業者が法人である必要があります。ここで、「原則として」としているのは、例外的に、病院や診療所を個人経営している個人事業主が訪問看護等を行う場合にあたっては法人格が必要としないという意味に捉えてもらえばいいと思います。したがって、新たに介護保険サービス事業をすると考えている場合には、法人格を取得しなくてはならないわけです。
 では、「法人ってなに?」とよくわからない方もいらっしゃるかと思いますが、株式会社や一般社団法人、社会福祉法人等、法律にしたがった手続により、個人とは別個の主体として国に認められた団体のことをいいます。
法人は、個人とは別個の主体であるため、あくまで契約などの法律行為は当該法人が行うということになり、代表者であろうとも契約の主体にはなりません。
法人の種類は多くありますが、営利(株式会社など)であろうが非営利(一般社団法人など)であろうが、指定を受けるための種類は問いません。ただし、施設サービスである特別養護老人ホームを開設するには、社会福祉法人である必要があります。
 ちなみに、株式会社を設立する場合には、設立費用として20万円程度ほど必要になります。これは、株式会社の設立登記をするためにかかる費用であって、資本金とは別になります。では資本金はいくら必要か、という話しになりますが、以前は、株式会社を設立する際には資本金が1000万円以上でなくてはならなかったのですが、現在は資本金は1円でも会社の登記をすることができます。具体的な設立登記のための手続はここでは割愛します。
 

1.2 ②「適切な人員基準を満たしていること」

 次に、指定を受けるサービス毎に、厚生労働省が定めた人員基準をみたさなければなりません。これは、介護保険サービスによって異なったり、地方公共団体ごとに独自の規定があることもありますので、詳しくは事業を行う予定の地方公共団体にお問い合わせ下さい。
 施設がいらないために比較的開設が容易と思われる訪問介護事業を行う場合を例にすると、常勤換算方法で2.5人以上の訪問介護職員を置くこと、サービス提供責任者を1名以上配置することなどが定められています。(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準第5条、第6条)

 

1.3 ③「適切な施設基準、運営基準を設けそれに従っている事」

 これも、指定を受けるサービスによって、基準は異なってきます。
 まず、施設基準ですが、訪問介護を例にとりますと、訪問介護は利用者宅でサービスを提供しますので、デイサービス(通所介護)のように事業所の広さについて基準は設けられていません。
事務処理に必要なスペースがあって、その専用区画が設けられていればよいのです。ただし、高齢者を相手にしますので、感染症を予防するために手指消毒洗浄設備が必要で、また、プライバシーに配慮した相談室を確保する必要があります。

運営基準については、訪問介護の場合、次のような項目について設けられています。

・サービスの基本的な取扱方針、具体的な取扱方針
・運営規定に定めるべき事項
・事故発生時、利用者の緊急時の対応
・職員の秘密保持義務
・苦情処理
・居宅介護支援事業者への利益供与の禁止
・サービス内容や手続の利用者への説明および同意の取得
・要介護認定申請の援助
・提供したサービスの内容等を記録および、利用者への記録の開示
・法定代理受領サービスの利用に関する援助など

2.最後に

 以上、非常に簡単ではありますが、指定事業者となるための指定の要件についてみてきました。とりあえずは、提供する介護サービス、地方公共団体毎に満たさなくてはならない基準がありますので、新規で介護保険事業を始める方の場合、手続きに明るい専門家に相談するなり、当該地方公共団体に問い合わせましょう。

関連記事

運営者

介護特化型リーガルパートナー
ページ上部へ戻る